「ダンジョン飯」 1~3巻 感想

ちょっと前に「ダンジョン飯」3巻を読みました。
ついでに1巻、2巻も読み返したので、
3巻までで自分が面白いと思った点などについて感想を書いてみようと思います。


作品概要
登場人物が、古典的ファンタジー作品に登場する様々なモンスターを現実に存在する調理方法によって料理しながらダンジョンを踏破していくという、アドベンチャーとグルメを混交させた作風の、グルメ・ファンタジー漫画。スライムやマンドラゴラ、バジリスクやゴーレムといった、ファンタジー作品では定番のモンスターの生態を改めて論理的に考察し、それに基づき「いかに調理すれば美味に食べられるか」を主眼に置いている。作中で実際に作られた料理にはレシピが記載され、そのことによってファンタジーでありながらリアリティー、説得力を生じさせている。(ダンジョン飯-Wikipediaより

 

ダンジョン探索型ファンタジーというと、日本でもゲームやマンガなどでお馴染みの舞台設定・シチュエーションですよね。

ダンジョン&ドラゴンズ」とか「ウイザードリィ」辺りが源流になっているみたいですけど、大体の人は子供の頃からドラクエなどのファンタジー系RPGで遊んできたと思うので、中世ヨーロッパ風ファンタジーの世界観とか説明不要ですんなり入り込めますね。

ダンジョン探索とかある意味手垢がついた題材というか、設定などかなりテンプレ化(お約束化)されているので、題材としての新鮮さは無いんじゃないかと思うのですが、 
そこにモンスターを調理(自給自足のサバイバル生活)する要素を加えたことで、独自の面白さが生まれています。

モンスターを料理するというアイデアだけなら出オチ・ワンパターン化しかねないと思うのですが、毎回手を変え品を変え「その発想はなっかった」というような、アイデアのバリエーションの豊富さ・作者の発想の面白さがこの作品の魅力になっています。 

自分の場合ゴーレムに野菜を植えて栽培しているネタがツボにはまりました(笑)。
モンスターの生態や調理方法が妙に現実的で説得力があり、作者の職人的な芸の細かさに感心させられました。

 

登場人物

ライオス 

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 主人公のライオスは、戦士としてはかなりの実力者なのですが腕っぷしが強いだけではなく、「魔物(モンスター)大好き人間」でもあり、好奇心・探究心の塊のような人間なところが面白いです。

一応「ダンジョン攻略」が目的で冒険者をやっているようなのですが、いつの間にかダンジョンに生息しているモンスターに魅了されるようになり、生態など独自に観察したり調べたりしていたようです。

モンスターの生態に興味を持つ所などは生物学者っぽい素質がありそうですが、面白いのは、モンスターが好きになるうちモンスターの「味も知りたくなった」というところでしょうかね。

未知の世界・未知の生物と出会ったとき、探究心を刺激されるのは、人間の生まれ持った性質なんでしょうか。
ライオスは変人レベルで探究心の強い人間のようですが、その探求心が特に「食欲」に特化されているようです。
正体不明の生物を食べるってなかなかハードルが高いよな、と自分などは思ってしまうのですが、ネットを見ていると、世の中色んな人がいるもので、「何でも食ってやろう」みたいなチャレンジャーが結構いるようです。
(「〇〇 料理」などのワードで検索すると色んなのがヒットしますね)。

「それを食べるのか・・・!」という意外性や驚きがあってわくわくしますね。
(どんな味なんだろうと想像して自分も食べてみたくなる)。
3巻ではクラーケン(巨大イカ)の寄生虫を生で食べて食中毒で苦しんでいましたが、あまり懲りてなさそうなところが「冒険野郎」という感じで面白いですね。

 

 

マルシル

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この作品は「料理ネタ」や「ファンタジーネタ」の面白さが見どころなのですが、もうひとつ見どころなのが「マルシルのリアクション」ではないかと思います。
変顔で笑わせるみたいな場面はそれほど多くはないのですが、表情のバリエーションが非常に多くて、表情が一コマずつころころ変わるので、マルシルの表情の変化を追うだけでも結構楽しい作品になってますね。
表情が多彩と言ってもあざとい感じがせず、これも作者の職人的な芸の細かさによるものではないかと思いました。

3巻ではライオスの妹ファリンと魔術師学校で一緒だったエピソードも登場。
魔力は強力ですが、どんくさくポンコツエルフかと思いきや、「学校始まって以来の才女」と言われるほど優等生だったとのこと。
学校では人工的にダンジョンを作る研究をしていましたが、本を読んで得た知識ばかりの優等生タイプだったのであまりうまくいっていなかった様子。
どうやらダンジョン冒険のパーティーに参加しているのは、自分の人工ダンジョン研究のため? なんでしょうかね。
3巻で「ダンジョン誕生の謎」みたいなテーマが出てきましたが、その方向でさらに話が展開することもあるんでしょうかね。

 

 

センシ

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「センシ」とはドワーフの言葉で「探究者」という意味とのこと。ライオスに先駆けて10年前からダンジョンに住み着き、自給自足のサバイバル生活を送ってきたようです(モンスター料理の達人)。
モンスター料理初心者のライオスにとっては、先輩・師匠のような存在になるわけですかね。
料理はセンシ担当なので、センシがモンスターをいかに美味しそうに調理するのか、というのがこの作品の肝になっているんでしょうかね。

綺麗好きで育ちがよさそうなマルシルと対比の関係になっているのも面白いところかなと思いました。
ドワーフとエルフの馬が合わないのはファンタジーのお約束ネタ?)。

マルシルの魔術は便利ですが、錬金術の研究から化学が発展したように、「魔術」=「科学・技術」みたいなものなんでしょうか。
自分自身も食物連鎖の一部として自然と共に生きる主義のセンシですが、どうやらこのダンジョン自体が魔術師によって人工的に作られたもののようだし、「自然」対「魔術(テクノロジー)」のようなテーマも出てくるんでしょうかね。

 

 

ファリン

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ライオスの妹。僧侶系の魔法の使い手としてはかなりの才能の持ち主のようです。
ライオスたちを助けるために自分だけドラゴンに食べられてしまいました。
作中ではずっとドラゴンの腹の中で消化中のため割と出番が少ないですね。
食べられてから1か月以内なら復活の可能性があるようなのですが、果たして間に合うのか?
3巻の終わりでは、ドラゴンの生息する近くにたどり着いていましたが、4巻で無事復活できるんでしょうかね。

3巻では、回想シーンで魔術学校にいた頃からマルシルと友達だったエピソードが出てきていました。

外で遊んでいるうちにダンジョンの生態系(魔術の循環)の仕組みに気付くなど、ぼんやりしているようで鋭い観察力の持ち主のようです。
研究室の秀才タイプだったマルシルがポンコツながらダンジョン探索に挑んでいるのもファリンとの出会いがきっかけになっているみたいですね。

 

 

チルチャック

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罠解除・鍵開けなど、盗賊スキルのエキスパート。
ハーフフットって何かと思ったらホビットと同じ種族のことのようですね。

見た目は中学生ぐらいに見えますが、実は29歳の大人だった。
ライオスやセンシのような変人でもないし、マルシルのようなどんくさいポンコツでもないので割と地味な存在ですかね。(ドライな物言いの弟的ポジション)。

プロフェッショナルな冒険者として、前金をもらっているのでファリン救出に付き合うなど義理堅い性格。

 

 

ダンジョンとは何なのか

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3巻の終わりではドラゴンの近くに到着していましたので、4巻でファリンを救出してそろそろ完結? なのかなと思うのですが、そのあとまだ話が続くのか気になりますね。

3巻でマルシルがダンジョンを人工的に作る研究をしていたという話が出てきたし、そもそもダンジョンとは何なんだということもちょっと気になってきました。
(まあ「料理ネタ」「ファンタジーネタ」だけで面白い作品なので無理に話の風呂敷を広げる必要はないかなとは思いますけど)。

ダンジョンを作ったのは「狂乱の魔術師」とのことで、ファリンを食べたドラゴンを倒したら終わりなのか、それとも「狂乱の魔術師」との対決もあるのか? 気になるところですね。(2巻の「生ける絵画」に出てきたダークエルフがもしかすると「狂乱の魔術師」なのかな? と思ったんですが、再登場するのかどうか)。

1000年前の王国は平和そうでしたが、なぜ狂乱の魔術師はダンジョンを作ったのか。(地下空間に城と城下町が埋まっている状態?)
ダンジョンの全体像がどうなっているのかとかモンスターがどこから出てきたのかなど、不明な点も結構ありますね。


***


「ファンタジー+料理」ネタが絶妙で楽しい作品で、ダンジョンの謎とか気になる展開もありましたので、4巻も楽しみです(4巻発売はまだだいぶ先ですけど)。

 

 

「僕だけがいない街 Re」【小林賢也(後編)】 外伝 感想


僕だけがいない街 Re』ケンヤ編(後編)を読みました。


この前・後編を一言でいうと、「小林(ケンヤ)少年の成長物語」といった感じでしょうか。

『僕街』本編の主人公、悟の場合はリバイバルという超常現象(超能力?)によって過去に戻り人生をやり直す物語でした(少年が成長する物語ではなく、大人になった主人公が子供に戻り人生を修正する物語)。

今回のケンヤ編では、ケンヤ(少年)が人との出会いや事件を通して成長する姿を描いた「成長物語」(いわゆるビルドゥングスロマン)になっていました。

外伝では、本編の主人公の悟がずっと眠り続けている状態なので、タイムリープ要素が薄れ、サブキャラたちの人間ドラマが作品の内容の中心になっているみたいですね。

タイムリープなどサスペンス要素が薄れているので、本編に比べるといささか地味な印象も受けるのですが、ヒーローにあこがれた少年(ケンヤ)がまっとうに努力して成長していく姿を描いた物語になっているので、ある意味王道の少年成長ストーリーになっていて、なかなか味わい深いエピソードになっていると思います。

外伝第一話の雛月加代も、悟との出会いや事件(悟が真犯人に殺されかけて眠り続けることになった事件)を通して、大きな成長を見せていました。

今回のケンヤ編でも雛月の場合と同様に、ヒーローとしての悟との出会いや事件を通して大きく成長するケンヤの姿が描かれていました。

ヒーローとしての悟に出会う前のケンヤは優秀ではあるけどまだまだ子供で、井の中の蛙のような状態だったようです。
(勉強もスポーツもクラスで一番だったし、すでに将来父親のような立派な職業に就くという目標を持っていたので、「自分だけ特別」「みんな子供っぽい」と、同年齢のクラスメートを自分と「対等」の存在とは思っていなかったようです)。

それが、自分のずっと先を行く悟との出会いによって自分の足りなさを自覚できるようになり、悟に「追いつきたい」「一緒に戦いたい」一心で、自分を変え成長することができました。

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本編4巻で、ケンヤが階段の下から悟を見上げるシーンと、今回のケンヤ編(後編)でケンヤが事件について父親と話をするシーンの構図(悟・父親がケンヤより上あるいはずっと前方にいる構図)が似ていると思ったんですが、これは人物間の上下関係を表すと同時に、「あの人に追いつきたい」というケンヤの目標(あこがれ)を表しているのかなと思いました。

特にケンヤにとってクラスメート(同い年)の悟が、自分よりずっと先にいるということが大きな意味を持っていたみたいですね。

ケンヤにとっては、自分の父親・母親や、悟の母、澤田さんなど、尊敬する大人たちに恵まれていたわけですが、同い年の悟の存在が最も大きな目標(あこがれ)になっていたようです。

ケンヤにとってのこの物語は、自分よりずっと先を行く「ヒーロー(悟)」に追いついて、自分がヒーローと「対等」の人間(=「親友」)になろうとする物語、だったのかなと思いました。

(ケンヤ編前編冒頭で、幼少期「親友」の証として仲が良かった友達に「宝物」の片割れをあげたけど、あっさり捨てられたことがケンヤの心の傷になっているエピソードが語られていた)。


本編8巻で事件解決後(八代の死刑が確定した後)の悟とケンヤの会話もこの作品の名場面の一つでした。

悟:「僕達・・・子供の頃憧れたヒーローに、ちょっとは近づけたかな?」

ケンヤ:「・・・うん ヒーローって言うにはずいぶん無様な気もするけど・・・そう信じたい」

そして二人が言葉を交わした後、固く握手するシーンは二人が「対等」の「親友」同士であることを表した胸熱名シーンだと思います。
(まあ、ケンヤのヒーローだった小学生の悟は実は中身が29歳だったわけですが・・・)

本編だけだと、ケンヤは子供にしてはあまりにも賢過ぎて完璧超人みたいなスーパー小学生なのかな? という印象を受けていたんですが、実は本編の裏側でも成功と失敗を繰り返しながら、ヒーローを追いかけて成長しようと前に進み続けていた少年だったわけですね。

少年が成長するためには、井の中の蛙のような状態から引きずりだしてくれるような、目標になる存在(あこがれの人の存在)が非常に重要ということなんでしょうかね。

ヒーローとしての悟に出会う前は、「自分だけ特別」とクラスメートを見下ろしていたり、勝利した後に「虚しさ」を感じていたケンヤでしたので、なんとなく真犯人の八代と少し共通する部分もあったのかな? とかちょっと思いました。
(外伝で今のところ八代の出番が少ないのですが、ケンヤと八代の絡みとかも見てみたかったですね)。


***


内容的にはやや地味な印象ではあったのですが、ケンヤ編も少年の成長物語として味わい深いエピソードだと思いました。
悟の相棒(パートナー)としてはある意味ヒロインの雛月や愛梨を凌ぐ存在だったのではないか・・・と思いますね(熱い友情)。

外伝があと何回続くのか分かりませんけど、次はだれが主役になるんだろうかと、続きが楽しみですね。
(自分としては、八代にもうひと暴れしてもらいたいとか思ったり)。

何にせよまだ続きがあるようなので楽しみです。
(次号は休載のようですが)。

 

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