僕だけがいない街 第11話「未来」 & 第12話「宝物」感想

ついに最終回を迎えたアニメ「僕だけがいない街」。
原作の残りの分量から考えると、アニメ版のラスト2話はかなりダイジェスト的に詰め込む感じになるのかな? と気になっていたのですが、アニメオリジナル展開を入れることで、思った以上に上手くまとめられていて、すっきりした終わり方になっていました。
カットし過ぎで破綻するとか、説明不足で意味が分からなくなるということもなく、
きちんとポイントが押さえられていて、最後まで非常に丁寧に作られていた良作品でした。

あまりにもすっきりした終わり方だったので、やや淡白で物足りなさを感じないわけでもないのですが、上手くまとめてあることには思わず感心してしまいました。



明かされていない謎として、悟の「リバイバル」や八代先生の「蜘蛛の糸」って結局何だったんだろう? というのが気になりましたが、そういう残った謎とかは原作8巻(最終巻)に出てくるんでしょうかね(原作者による外伝もまだ続くようだし)。



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ラスト2話の内容的な中心は真犯人である八代先生との対決ですが、
母親になった雛月加代との再会シーンも、この作品のクライマックスの一つになるんでしょうね。

15年眠り続け、リバイバルで子供時代に戻ってから、それ以降の記憶を失っている悟でしたが、
赤ん坊を抱いて病室に現れた加代を見て、思わず溢れるように涙を流しながら「おめでとう、加代」と言います。

原作ではこの時の悟の表情が、安堵、喜び、祝福に溢れた本当にうれしそうな表情だったのですが、アニメでは何となく放心したような? 表情になっていますね。
(原作を読んだときは、何となくチャップリンの映画『街の灯』のラストシーンを思い出しました)。

アニメ10話では真犯人の八代先生が、何度も「代償」「代償行為」という言葉を使っていましたが、このシーンで涙を流し続ける悟の姿からは「無償の愛(自己犠牲)」のようなものを感じます。
(元々は自分の為に事件を防ごうとしていたわけですから、「無償」というわけではないんでしょうけどね)。

作品としてのクライマックスは真犯人の八代先生との決着なんでしょうけど、加代中心の物語としてはここも大きなクライマックスシーンですよね。

本来死んでいたはずの加代が殺されずに大人になれた。

母親に虐待され、一人で遠くに行きたいと文集に書いていた加代が、一人ぼっちではなく家族ができて母親になれた。

悟は事件を防ぐ代償として犯人に殺されかけて15年植物状態でしたが(体を張って大きな代償を払ったわけですが)、その結果として加代は幸せになれたという。

なんだかんだ言ってもこの作品の一番の関心事は、「かわいそうな女の子(=雛月加代)」が救われるのか? 幸せになれるのか? ハラハラしながら見ていたので、加代が幸せになれたという結末を見れてほっとしましたね。

出来たら悟が意識不明になってから、加代が15年間どのように過ごしていたのか(悟のことをどう思っていたのか? どのように心境が変化していったのか? など)も知りたいですが、そういうのは読者・視聴者が想像すればいいことなんでしょうかね。
(できたら原作者に外伝とかでフォローしてもらいたいですが・・・)。


しかし、15年意識不明で目が覚めたら大人になっていたというのも考えてみればかなり恐ろしい話ですよね(何となく『レナードの朝』という映画を思い出しました)。

時間を超えて現代に戻ってくるという意味ではタイムリープと同じかもしれませんが、その戻って来た方法が「15年意識を失っていて目が覚めた」という展開だったのが意外性があって面白いですね。

そこに現れた加代が、いきなり大人になっていて結婚して子供も出来ているというのが、未知の「未来」に飛ばされた感(浦島太郎的な?)があって面白かったです。

 

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記憶を失っていた悟でしたが、加代との再会がきっかけで記憶が戻り始めたようですね。
確か原作では、悟が記憶を取り戻すのは愛梨との偶然の再会がきっかけになっていたようでしたが、アニメ版では加代との再会がきっかけで記憶が戻り始めたことになっていました(特に加代の赤ん坊と掌を合わせたことで記憶が戻り始めた)。

ついでに、愛梨再登場のシーンですが(週刊誌のカメラマンをぶん殴るシーン)、愛梨の出番の代わりに八代先生が出てきました。

ここまでかなり原作に忠実なアニメ版でしたが、最後に来てアニオリ別ルートに突入。
週刊誌の盗撮カメラマンが出てきたので、「愛梨登場か」と思って見てたら、いきなり八代先生が出てきたので驚きました。
そのため愛梨の出番がなくなってしまいましたが、意外性があってこれはいいサプライズだと思いました(最終回の最後の最後に愛梨が出てきてくれてほっとしたw)。

原作で言うと6~8巻までの約3巻分をラスト2話でまとめるわけですから原作通りにやっていたのでは、まず無理ですよね。

その辺りの改変・まとめ方が自分的には興味があったのですが・・・、かなり上手くまとめてあって、良かったと思います。
八代先生の子供時代の回想シーンは見たかったかな、とは思いましたがちゃんと「スパイス」の話も出てきていたし、かなり上手くまとまっていると思いました。
悟が屋上から落ちるシーンで、悟母やケンヤがマットを用意して待っていたというのが少し無理があって、頭の中が「?」になりましたが・・・(悟母はともかく、社会人のケンヤ、ヒロミ、澤田さんがいるのはおかしいですよね)。

病院の屋上での悟と八代先生との会話も、重要なことが語られているようではあるのですが・・・やはりどうしても情報量が足りないように感じたので、この辺りの内容的な補完は原作8巻を読んで確認したいと思いました。
八代先生はいいキャラだと思うので、なぜ犯罪を繰り返したのかなど興味があるのですが、正直アニメ版だけだと情報不足でよく分からないのではないかと自分は思いました。

あと、小学5年の時の文集に悟が何を書いていたのか、これまで謎だったのでずっと気になっていたのですが、アニメ版でついに出てきました。
割と大事な伏線なのでは? と思っていたのですが、意外にさらっとした内容だったので、原作ではどうなっているんだろう・・・と気になりました。


僕だけがいない街」アニメ版の全体的な感想としては、非常に丁寧に作られていてクオリティーが高く1クール(全12話)のアニメ化としては、ほぼベストの出来だったと思います。

小学生編の雛月加代の描写に比重を置いて尺を大きく割いているのも結果としてはよかったと思います。
原作が非常に面白いので、どう作っても面白くなるような感じもあるのですが、いくつかの演出やシーンではマンガでは表現しきれないアニメならではの良さが多々あって部分的には原作を超えているようにも思いました(感じ方は人それぞれなので自分の場合はということですが)。

11話途中からのアニメオリジナル展開も、この作品が「タイムリープもの」であるためか、「原作改変」というよりは、物語が分岐した「別ルート」みたいなイメージなので、多分原作とは別の終わり方になっているんでしょうけど、あまり違和感が無く「これはこれでいいな」と思いました。

原作8巻は5/2発売(amazonだと4/26?)のようなので、
アニメは終わりましたが、引き続き原作がどのような結末になっているのか楽しみです。

 

 

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